エンゲージメント

【経営層に課題?】エンゲージメントサーベイで見えた組織改革の壁:3年目の分析と改善策を実例から紹介

エンゲージメントサーベイは毎年実施しているアンケートのことか!

サーベイを実施しても働き方が変わる実感がないなあ・・・

もっと、サーベイに関する情報を開示してほしいな

エンゲージメントサーベイ実施により、変わる期待感や、透明性の高い情報公開が社員から求められます。

本記事は、エンゲージメントサーベイを3年間実施した結果から、組織改革が与える影響を具体例で示し、分析・取り組み事例を提供します。


背景と調査概要

調査の目的

本サーベイは、「社員のエンゲージメント」「組織内連携」「働き方改革の実感」「評価」「組織風土」の6つを測定することを目的としました。

対象は、全職員で、回答率は67〜8%を維持しています(サーベイ設計の参考事例:実務での導入や回答率改善に関する総務省の公開事例が存在します)

3年間の取り組みの概略

  • 1年目:組織改革から逆算した項目設定、回答数値を公開。結果を元に「業務量の削減」と「コミュニケーション」強化によりエンゲージメント向上に取り組む。
  • 2年目:業務スクラップ、業務改善を中心に業務量を削減、1on1ミーティング・マネジメント研修を中心にコミュニケーション改革。
  • 3年目:これまでの取り組みを継承しつつ、評価制度や権限配分など、構造的な改革に着手。特に、エンゲージメントが低く、人数の多い所属に絞り、重点的に支援。

3年目の主な結果サマリー

定量データのハイライト

3年目のエンゲージメントスコアは、1→2年目の小幅改善に続き横ばいか部分悪化する項目が見られました。特に、強みであった組織風土の項目に若干の低下傾向。

初期は、関心の高まりにより全体的に高いスコアが確認された一方で、3年目では、エンゲージメントに関する理解も進み、より現場の数値が反映された。

定性フィードバックの傾向

自由記述では「施策は増えたが現場で実行されない」「論理的な意思決定や透明性に欠く施策が目立つ」「立場ごとに方針が異なることに違和感」という声が散見された。

  1. 制度に関する提案66%
  2. マネジメントに関する提案41%
  3. その他23%

複数の事例研究でも、現場の声が可視化されても権限移譲や実行体制が整わなければ効果が限定的であると示唆されています リクルートマネジメントソリューションズ ABeam Consulting


実例で見る組織改革の難しさ(実体験編)

事例A:トップ層が変わる意識が低いこと

状況:エンゲージメントサーベイの結果が年々微減している状況下で、責任は経営層にあると発信しているが、コミュニケーションをはじめ変化なく、論理的な設計や透明性の低い施策をトップダウンで実施している。

施策:タウンホールミーティングや経営層との情報共有の場を増加させ、週次での状況共有会、短期的な暫定権限付与を実行。

期待と現実のギャップ:現場の声として意見交換の場は増えたが、根本のコミュニケーションが変わらず、意思決定に違和感を覚える頻度が増えた。トップから変わる雰囲気は感じられず、諦めエンゲージメントが下がる職員が増えている感覚

事例B:働く環境を変えるデータ活用と施策の浸透

状況:エンゲージメントサーベイの分析及び施策実行を内製化で運用しているため、分析、施策立案、実行まで行う必要があり、職員からの共感や変わる実感が得られるまで、施策を展開しにくかった

施策:エンゲージメントサーベイの分析と企画立案、マネジメントや1on1ミーティングの実施。

期待と現実のギャップ:改革の実感値を得にくいことからエンゲージメントが下がる一つの要因となったと推察。

事例C:現場改善の意思決定権が届かないボトムアップ施策

状況:現場からの改善提案を募集する仕組みを導入したが、実際は、理由をつけて、保留と却下のオンパレード。

期待と現実のギャップ:提案活動は形骸化し、意欲が低下。未来が変わらないことに気づく社員が諦める状況

複数企業のサーベイ活用事例では、ボトムアップを実効化するために権限移譲や評価連動が不可欠だとされています ラフールサーベイ ABeam Consulting


分析:なぜ改革は進まないのか

構造的要因

評価制度が短期KPI中心、承認フローが多段階、権限が中央集権的であると、現場の迅速な意思決定や成果実現が阻害されます。

経営層に権限が集中することで、統一された方針となりますが、権限を下ろし、下位の階層でも方針に沿った意思決定できる組織の方が、主体性とスピード感が出ますね。

人的・心理的要因

変化に対する抵抗、失敗を恐れる文化、リーダーの力量差がボトルネックになります。特に管理職のコミュニケーション不足や目的の共有が不十分している職場には、社員の信頼が低下し、改革の推進が鈍化する傾向があります。

仕事の改革よりも、このモヤモヤが溜まるコミュニケーションや環境を変えたいと思うケースが多いです。

改革の推進は、経営層やマネジメント層のリーダーシップや信頼が必要です。現場にやる気を持たせるためには、対話による関係性づくりが必要です。

人の心を掴み信頼を得ることで、推進が加速します

実行プロセス上の問題点

計画段階での現場巻き込み不足、PDCAサイクルが回らない、測るべき指標と施策が対応していない等が挙げられます。実行体制と測定が連動して業務改善が持続します。

これらを解決するために、忙しい現場に寄り添い、伴走支援を充実させる必要があります。


実務的な示唆と改善ロードマップ

優先すべき短期アクション(0–6ヶ月)

中長期の構造改革(6–24ヶ月)

  • 評価制度の見直し(成果だけでなくプロセス・協働・改善活動を評価)。
  • 明確な権限移譲ルールと意思決定基準を定める。
  • 組織設計の変更やジョブディスクリプションの再定義を段階的に実施し、OJTや人材育成計画と連動させる事例が有効でした ABeam Consulting

成功のための条件とKPI設定

  • リーダーの明確なコミットメントと説明責任。
  • KPI例:改善提案の実行率、意思決定リードタイム、上司信頼スコア、eNPS(従業員NPS)などの定期追跡 株式会社エモーションテック
  • 透明性を担保するための定期報告と従業員へのフィードバックループを必須化。

まとめと今後のチェックポイント

3年間の学びとしてエンゲージメント改善は「声を集める」だけでは不十分で、制度・権限・リーダーシップ・実行プロセスを同時に整える必要があります。短期の信頼回復施策と並行して、中長期の構造改革を段階的に進めることが実務上の王道です。

参考となる事例や公的資料を活用しつつ、自社の業務慣習に合う形で適用していくのが良さそうです。

一番優先したのが、リーダーシップと信頼の2つです。この2つを揃えるために、リーダーからの発信と浸透、対話による関係性構築施策を大切にしていこうと思います。

参考(事例・解説):

各リンクは本文中の参考番号を参照してください。

ABOUT ME
やし
1000人規模の組織で、経営戦略やDX、HR部門など経験。現在は、HR部門で、組織改革や採用、人材育成を担当。学んだことや経験則から、組織や人に関することを中心に発信しています。