人事が、1on1ミーティングを推してくるけど必要?
ウチのチームは関係性が良いから、敢えて取り組む必要はない
業務に集中した方が売り上げを伸ばせるし、忙しいから最低限で良い
そう感じる気持ちわかります。
人事の立場で推進していくと、上記のいずれかを言われます笑
コロナ禍からコミュニケーションの常識が大きく変わり、人の価値観に影響したことで、多様性を尊重することが一般的になりつつあります。
現在では、コロナ前の懇親会を中心とするコミュニケーション手法が減る
一方で、コミュニケーション不足によりトラブルに発展するケースも増えた感覚があります。
近年では、人的資本経営に着目する企業が増え、1on1ミーティングを実施する企業が増加しています。背景には、従業員のモチベーション向上やパフォーマンスの最適化、コミュニケーション課題の解消などが挙げられます。
私の所属する組織でも、1on1ミーティングを取り入れています。
1on1を実践しているマネージャーがいるチームは、エンゲージメントサーベイの結果から、風通しがよく生産性が高い傾向が見受けられました。
私は1on1を実施する側と受け手側のどちらも実施していますが、話せなかったことを相談できるなど、コミュニケーションの回数が増えました。
ただ、1on1を実践すれば良いわけではありません。
残念なコミュニケーションを取ることで、更にメンバーのモチベーションを下げてしまうリスクもあります。
今回の記事では、1on1ミーティングがより有意義で生産性の高い取り組みとなるように、ノウハウをまとめ記載しています。
1on1ミーティングとは
1on1ミーティングの目的は、上司と部下が1対1で話し合うことで、部下の成長を促進し、チームのパフォーマンスを最大化することです。
1on1ミーティングは、アメリカで始まった手法で、米国シリコンバレーでも文化として根付いています。
日本ではヤフーが取り入れたことで話題になり、現在は多くの企業で導入が進んでいます。
また、Googleの「プロジェクトアリストテレス」では、信じ合えるメンバーがいるチームは意見交換が活発化し、生産性が向上しました
「ただえさえ忙しいのに…、そんな時間はない」という声もたびたび聞かれます。
私は、1つの要因として「忙しくて1on1の時間がない」のではなく、「効果的な1on1を実施しないからいつまでも忙しい」と考えています。
さらに、いい仕事をひとり一人が成し遂げるために、あるいは、いい仕事をチームで成し遂げるために、1on1は欠かせないものと言えます。
なぜなら、1on1の時間がなければ仕事は短期的な視座に立ち、目の前のタスクを処理することだけに集中してしまうからです。
視座を高め、中長期的なことを考える、こういった時間を持つことの効果についてご紹介しています。
- 信頼関係・コミュニケーションの強化
- 仕事ぶりへのフィードバック提供の機会の増加
- 課題の早期発見と解決
- モチベーションの維持向上
- 「やらされ感」から「やっている感」(主体性の強化)
- 業務スキルやパフォーマンスの向上
- ストレスの軽減や突然の離職の防止
1on1をやると生まれるだろうと考えるのは、特に上の3つです。
信頼関係が構築できているほど、いい仕事のできる環境が醸成できます。

【信頼貯金】先出しマインドの魅力をメリットや注意点、周囲から信頼を得る習慣化まで解説!
また、組織のなかでどんな問題が発生しているのか、管理職側がなかなか
察知できていない、察知しづらいということがあります。
定期的な1on1によって、早めに問題点を認識し、対処することができる
ようになります。
なぜ、1on1ミーティングを実施する必要があるか
1on1ミーティングの意義は、眼前の業務に集中することも重要ですが、
中長期的な視座に立ち、一人ひとりの仕事や人生について腰を据えて考える機会が重要であること。
「1on1」とは日本語にすると、「1対1」となります。だからといって、1対1で話をすればいいのかというと、そうでもありません。
よくある悪い例で、「1対1のやり取り」を紹介すると、
- 業務内容に関する報連相
- 忙しく慌ただしい
- 主に上司→部下に向かう
- 上司が伝えたいことを話す
- 上司のための時間
また、指示命令を伴うものも多く、上司から部下に向けられたメッセージであることもあります。
簡単に言い換えると、上司が伝えたいことを話す、上司のための時間といえます。
一方で、私が伝えたい「効果的な1on1」とは、下記のような、中長期的な視座に立ち、じっくりと、集中して話す場のことを言います。
- 中長期的な視座に立つ
- じっくりと集中して話す
- 上司⇔部下の双方向性
- 部下が話したい・聞きたいことを話す
- 部下のための時間
部下が話したいことを、中長期的なテーマについて話す。
部下のための時間と言えます。
一人ひとりの仕事や人生について、中長期的な視座に立って考える機会でもあります。
キャリアのこと、これからの働き方のことなどを取り扱うことができる、
そんな時間となります。
やはり、部下の未来のために時間を投資することは、部下のモチベーションの向上や思考の整理、信頼関係の構築など、未来に良い影響を与える種まきのような効果があります。
1on1の基本的な進め方
1on1を開催する際のポイントを、「場づくり」、「振り返り・まとめ」、話すための
「主なテーマ」を紹介します。
まず「場づくり」について、話しやすい環境やリラックスできる雰囲気づくりが大切です。
また、上司部下という関係から上司側からの自己開示は、部下の上司へのパーソナルな部分への理解に繋がり、分からないという恐怖や不安が軽減されます。
- 話しやすい環境をつくる(落ち着いて話せる/席の配置/立ち位置)
- リラックスした雰囲気をつくる(相手の応えやすい質問)
- オープンなコミュニケーション(自分のことを少し話す)
- 感謝や労い言葉を伝える
また、日々の取り組みについて、感謝や労いの言葉を伝えることは何よりも生産性の向上につながります。
私の所属する組織では、「人事評価も大切だが、感謝や労いの言葉が大切」と答えた方が7割以上います。これは、上司からの感謝や労いの言葉が、自らの承認につながり、自己効力感の向上に影響することを示しています。
続いて、主テーマに上がる8個のテーマを紹介します。
紹介したテーマを中心に、1on1で取り扱いたいテーマを選び、そのテーマについてじっくりと話をします。
- 業務の進捗状況
- 課題や問題点の共有
- フィードバックの提供
- 目標の確認と設定
- キャリアやスキル開発
- モチベーションや感情の共有
- 将来のキャリアパスや役割
- その他の個人的な話題
上司や先輩側は、相手の話をよく聞くことが1on1の効果を高まます。
最後に「振り返りとまとめ」の時間を取りましょう。
今日話した感想はもちろんのこと、1on1にまだ慣れていないということであれば、次回以降1on1をよりよいものにするために、どうしたらいいか?という点でフィードバックをもらうのもよいと考えます。
- このあとのアクションの整理
- 実施にあたり必要なサポートの確認
- お互いの感想の共有
- 次回の1on1への期待・軌道修正・日時の確認
1回目のテーマ選び
初めての1on1では何をテーマに選んだらいいのか、迷うかもしれません。
1on1でどんな話ができるとよいかを本人と一緒に考えましょう。
中長期的に取り扱いたいテーマを1~3個選ぶことがオススメです。
- 業務の進捗状況
- 課題や問題点の共有
- フィードバックの提供
- 目標の確認と設定
- キャリアやスキル開発
- モチベーションや感情の共有
- 将来のキャリアパスや役割
- その他の個人的な話題
初回の1on1では、どんなテーマを話せるとよいと考えるか、ご本人の意向を確認するとよいでしょう。
私が管理職をしていたら、と考えてみると…
最初に取り扱うのは、「目標の確認と設定」がオススメします。
仮にご本人が「お互いの価値観の共有について扱いたい」と意思表示があるとしたら、「理想の生活はどんなイメージ?」や
「理想の生活を実現するために、どんな経験やスキルを手に入れておきたいと考えているか?」という、そのテーマにおける目標を確認する必要がある、と考えるためです。
初回の1on1において、こういう時間を通じて、どうなっていけるといいか?
という大きなストーリーを一緒に描くところからスタートしていきましょう!
1on1を実施するときに準備すべきこと
次に、1on1を実施するときの注意事項がありますのでご紹介します。
重要なことは相手の考えていること、アイデアを尊重し、1on1の時間を大切に、相手のための時間であることを忘れずにいましょう。
- 取り扱いたいテーマを整理し部下と共有する
- テーマに関する部下の動向・パフォーマンスを確認する
- 過去の1on1の内容を確認する
- 部下の現在の業務状況・直面する課題を把握する
- ポジティブなフィードバックを準備する
- 部下のためにできること・提案を整理する
- 想定される部下からの質問や意見に備える
- リラックスし率直なコミュニケーションが取れる雰囲気づくり
- 1on1直後に予定を入れない
例えば、③の「過去の1on1の内容を覚えていない」というのは、相手にとってショックだったり、この時間を大切に思ってはいない、というメッセージになってしまいます。
どんなに忙しくても、準備をしたり、過去の経緯を思い出して1on1に
のぞみましょう。
1on1では「慌ただしく進める」ということがないようにします。
そのために、⑨のように、1on1直後に予定が入っていると、振り返りや
まとめがいい加減になってしまう恐れがあります。
1on1の時間が多少伸びても、あるいは時間通りに終わっても、そのあとの余韻が取れるようにタイムマネジメントしておくことをお勧めしています。
オススメしているのは、1on1をするときに、開始前30分は予定が入らないようにブロックし、一人で準備する時間を確保すること。
過去の経緯を思い出し、最近の仕事ぶりを思い浮かべる時間に費やします。
また、1on1が終わった後も10分から30分は他の予定が入らないようにしています。
1on1の内容を私も一人で振り返り、次の1on1の予定のカレンダーに、メモを残したりする時間として必要です。
こんな1on1はNG…
さて、このページの内容は、実際に1on1をやってみたあとにも使ってください。
慣れていないときには、本人とともにこのチェックリストを見てみるのもよい方法です。
多くの管理職が、自分に甘かったり、自己認識が足りていなかったりします。
少し厳しめに、自分が実施した1on1について振り返ってみてください。
- 管理職の話す時間の方が多い
- 管理職から指示や命令が出される
- 「アドバイス」という名の指示である
- 改善点のダメ出しばかりである
- 部下の話を途中で遮る
- 相づちがあいまい・タイミングが早い
- 目線が部下を向いていない
- 管理職が準備不足である
- 部下の現状について把握していない
- 前回の1on1の内容を覚えていない
- プライベートな問題に過干渉する
- 失敗の責任を追及する場になる
- ミスの原因を本人に押し付ける
- どう改善するのか前向きな姿勢で考えない
- 改善策を一緒に考えない
- 感情的な言葉が使われる
- 感情的な態度で臨む
- 他の従業員と比較する
- 時間に遅れる
- 頻繁にリスケが行われる
私の場合は、話を聞くことはできる認識ですが、「話す時間が長くなりがち」というという自覚があり、とにかく端的に伝え、聞く時間を増やす、ということを意識しています。
相手がポジティブに話を展開できるようなコメントを意識していますが、
まだまだ至らないところです。
1on1における管理職・先輩の関わり方・姿勢
最後に、管理職や先輩の関わり方についてご紹介しています。
ポイントは3つです。
未来を向く
まず、未来を向くということ。うまく進捗していないとき、物事がスムーズに進んでいないとき、1on1で「なぜできない?」と言われると、問い詰められているような気持ちになってしまいます。
それでも、原因を特定して未来を切り拓いていきたい、そんなときもあるはずです。
ただ、こういうときに「なぜできないと思いますか?」のような聞き方は、未来思考にはなりにくいです。
私はこういうときに、「あなたが前に進むのを阻害しているのは何ですか?」と聞いています。
「あなたは前に進もうとしている」という前提に立ち、「阻害しているもの」を聞いているんです。
「なぜできないの?」という問いと、同じようなことを聞いていますが、
印象が違うのではないでしょうか?
部下を主体
2点目は、部下を主体にするということです。うっかり、管理職や先輩が主人公となる1on1があります。
部下がじーっと、上司の話を聞いている、そんな1on1にはまったく効果はありません。
意識的に問いかけ、話を聞く姿勢を貫きましょう。
一緒に考える
3点目は、一緒に考えるということ。
管理職が答えを出すのではありませんが、「あなたが思うようにやってみてください」では、突き放しすぎていると感じます。
部下が目標を達成できるように、一緒に情熱を注ぎ、伴走しながら、一緒に考えましょう。
まとめ
1on1の意義や進め方、OK・NGアクションまでいくつか紹介させていただきました。
1on1は手段であり、その先にある働きやすい職場や目標の達成、エンゲージメントの向上など時間を投資するだけの価値があると実感しています。
まずは、10分でもよいので、初めて見ることをオススメします。
定期的に行うことで、職場の雰囲気や数値データを取れば、実感できることがありますので、ぜひ試してみてください。