コミュニケーション

【裸の王様】なぜ権力や立場で暴君のような振る舞えをする人が生まれるのか。3つ理論から対策を公開

高圧的な上司と萎縮する部下

なぜあんな振る舞いの人が役職に就いているのか

昔はあんな人ではなかった気がするけど、権力を持つと変わるのか

人の話を聞く姿勢がないから、変わりそうもないし何を言っても無駄かな・・・

こんなことが所属している組織で起きているので、人が権力や立場で変わってしまう現象について、まとめてみます。

はじめに:権力がもたらす“裸の王様暴君化”現象

組織のトップやリーダーが権力や地位を得ると、なぜか傲慢で抑圧的な言動を取り始める現象を見かける。この現象はなにか。

イメージしやすいので、この現象をあえて「暴君化」と呼びます。この「暴君化」は、歴史上の独裁者だけでなく、企業や学校でも起こり得る身近な問題です。

本記事では、社会心理学の代表的理論「アプローチ・抑制理論」「ハブリス症候群」「ルシファー効果」を手掛かりに、暴君化のメカニズムと具体的な予防策を分かりやすく解説します。


アプローチ・抑制理論で読み解く権力の効用と危険

まず、暴君化現象を「アプローチ・抑制理論」の観点から理解を深めてみます。

理論の基本メカニズム

アプローチ・抑制理論は、権力を得ると「行動を促す力(アプローチ動機)」が強まり「自制や他者への配慮(抑制動機)」が弱まると説明します。

例えば、上司になると新しいプロジェクトに挑戦しやすくなる一方、部下の意見を聞く余裕が減ってしまうのです。

私の組織でも、形式上部下の話を聞きますが取り入れることはせず、独断で相談することなく進めてしまう現象が見受けられます。特筆すべきことは、本人に悪意なく、周りの同意を得ていると思い込んでいることです。

権力獲得後に現れる行動変容

権力を持つと「成功体験」による自信が膨らみ、他者の感情に鈍感になりやすい傾向があります。

例えば、部下のミスを叱責する際に「なぜそんな簡単なことができない」と言い放ち、相手の立場に立ったフォローをしなくなるケースが典型です。相手立ち位置などを理解できないことが原因です。

また、許可権や評価権を手にした瞬間、判断基準が自分中心にシフトし、柔軟性を失ってしまうことも特徴として挙げられます。


ヒュブリス症候群:成功が招く過信の罠

続いて、暴君化現象を「ヒュブリス症候群」の観点から理解を深めてみます。

症状と代表的事例

「ヒュブリス症候群」は、偉業を成し遂げたリーダーに見られる慢心の現象です。
古代ギリシャの王ペルセウスや近代の企業創業者など、成功の絶頂期に過剰な自己評価に陥り、独裁的な意思決定を繰り返した事例が知られています。

現代企業でも「株価上昇を自らの手腕だけの成果と過信し、ガバナンスを軽視した経営判断で失敗に至った」ケースが報告されています

参考:チームの教科書

参考:メディカルオンライン

根底にある心理メカニズム

ヒュブリス症候群の背後には、自己肯定感の過剰上昇外部からの批判を拒絶する心理があります。

成功体験が「自分は間違えない」という確信を強め、異論を封じた結果、暴走状態に陥りやすくなるのです。

このとき有効なのは、意図的なフィードバック回路として社内外の第三者からの厳しい意見を定期的に受け入れる仕組みの設置です。


ルシファー効果:状況が生む“悪の連鎖”

続いて、暴君化現象を「ルシファー効果」の観点から理解を深めてみます。

実験が示す人間行動の脆さ

スタンフォード監獄実験(1971年)は、環境や役割が人を犯罪的行動に駆り立てることを明らかにしました。

「権威の象徴」である制服やバッジを着用した参加者が、徐々に抑圧的な監視者役へと変貌した事例はあまりにも有名です(参考:スタンフォード監獄実験)。

これは日常の職場でも「役職」「タイトル」が暴走スイッチとなり得ることを示唆しています。

参考:ルシファー効果

暴君化を後押しする環境要因

匿名性の高さや監視の欠如意思決定プロセスの不透明さは、モラル崩壊を助長します。
支店長やプロジェクトリーダーが「顔の見えない部下」を一方的に管理し、異論を排除すると暴君化の引き金となります。

逆にオープンな議論文化や適切な監査体制がある環境では、権力乱用の歯止めが効きやすくなることが分かっています。


暴君化を防ぐ組織・個人レベルの対策

チェック&バランスの組織設計

権限を一点に集中させず、複数の意思決定ルートを用意することが基本です。

例えば、重要案件は「部門長+プロジェクトチーム+社外顧問」の三者承認制を採用するだけで、独断の余地を大きく減らせます。

透明性を高める議事録公開や、緊急時にもリアルタイムに情報共有する仕組みも有効です。

360度フィードバックと自己省察

定期的に上司・部下・同僚から匿名評価を受け、自己認識ギャップを把握します。
「あなたの強み・改善点」を他者の目線で知ることで、暴走の初期サインに気づきやすくなります。

企業ではこれを人事評価制度と連携させ、評価結果に基づく行動改善プランをフォローアップします。

人の話(客観的な評価)を受け入れ、改善する習慣を仕組み化すると良いでしょう。

リーダー倫理研修とロールプレイ

実際のケーススタディやロールプレイを通し、権力乱用の危険性を体験的に学ぶ場を設けます。

具体的には「部下から反発されたときにどう対処すべきか」「失敗を自ら公表するときの言葉がけ」などを演習します。

こうした研修は単発ではなく、年1回以上の継続開催が望ましく、組織文化として定着させることが鍵です。


まとめ:暴君化を抑え、健全なリーダーシップへ

権力や立場で人が変わることは、誰にでも起こりうることです。これらの現象を理論で理解することは、組織を強くするきっかけになるし、自分が立場についた時の予防につながります。

これらは気づきにくいもので、立場が変わってから周りから人がいなくなった時は危険サインです。少しずつ人が離れていくので、感じにくいですが、談笑する機会が減ったと感じたら、変わったサインかもしれません。

そのようなことにならないために、本記事では、本人と周りができることを以下とおり整理しています。

  1. 権力のメカニズムを知る(アプローチ・抑制理論)
  2. 慢心を抑える仕組みをつくる(ハブリス症候群対策)
  3. 環境要因を整える(ルシファー効果への備え)

これらを組み合わせ取り組むことで、権力や地位を得ても暴君に変わらないリーダーシップを取れる人材が生まれます。

今日から組織設計や人材育成の一環として取り入れ、健全で持続可能なチーム運営を目指しましょう。

ABOUT ME
やし
1000人規模の組織で、経営戦略やDX、HR部門など経験。現在は、HR部門で、組織改革や採用、人材育成を担当。学んだことや経験則から、組織や人に関することを中心に発信しています。