【逆境を乗り越える力】なぜあの人は潰れないのか?人事が見た「レジリエンス」が高い人の共通点と具体的習慣

はじめに:なぜ「耐えられる人」と「潰れる人」に分かれるのか?
「なぜ、自分だけがこんなに辛い思いをしなければならないのか……」
険しい山の斜面を登っている最中、ふと足が止まり、そう呟きたくなる瞬間は誰にでもあります。
仕事での大きなミス、人間関係のトラブル、あるいは自分ではどうしようもない環境の変化。
日々、私たちは予想外の壁や困難に直面します。
人事担当として1,000人規模の組織に身を置いていると、同じようなストレスフルな環境に置かれても、「心が折れて動けなくなってしまう人」と、「しなやかに受け流し、むしろそれを糧に成長する人」の二手に分かれる現場を何度も目にしてきました。
この違いは、生まれ持った才能や性格の明るさだけではありません。
心理学では、この違いを生む鍵を 「レジリエンス(精神的回復力)」 と呼びます。
「何をやっても上手くいかない」
「どうしてこの状況から抜け出せないのか」
もしあなたが今、そんな不安に押し潰されそうになっているのなら、この記事はあなたのためのものです。
この記事では、HR(人事)の現場で培った知見と心理学的なアプローチを掛け合わせ、 「折れない心」ではなく「戻る心」 を手に入れるための具体的な思考法と実践テクニックを解説します。
精神論や根性論ではありません。今日から誰でも始められる「心の技術」です。
読み終える頃には、今の苦しい状況が「乗り越えられない壁」ではなく、「次のステージへの踏み台」に見え始めているはずです。
1. レジリエンスとは何か:誤解されがちな「強さ」の正体
レジリエンス(Resilience)とは、もともと物理学の用語で「弾力性」や「復元力」を意味します。
心理学においては、 「困難な状況に直面しても、しなやかに適応し、回復する力」 と定義されます。
多くの人が陥る「誤解」
ここで重要なのは、レジリエンスとは「決して傷つかない鋼のようなメンタル」のことではない、ということです。
私が人事面談をしていて心配になるのは、「辛くても歯を食いしばって耐え続けること」が正解だと思っている人です。これはレジリエンスではなく、ただの「我慢」です。我慢はいずれ限界を迎え、ポキリと折れてしまいます。
真のレジリエンスとは、「竹」のようなしなやかさです。
強風が吹けば大きく曲がりますが、風が止めば元の真っ直ぐな姿に戻る。
「落ち込まない」のではなく、「落ち込んでも、必ず戻ってこられる力」。これこそが、現代社会で求められる本当の強さなのです。
2. なぜ現代でレジリエンスが「必須スキル」なのか
グローバル化、AIの台頭、そしてパンデミック後の働き方の変化。現代は「VUCA(ブーカ)の時代」と呼ばれ、予測不能な変化が日常茶飯事となっています。
Job総研の「2025年 職場のストレス実態調査」によると、従業員の約70%以上が「現職場でストレスを感じている」と回答しています。
私の所属する組織でも、環境変化のスピードについていけず、心身のバランスを崩す職員が増加傾向にあります。
かつてのように、「決まったレールの上を走っていれば安泰」という時代は終わりました。
予期せぬトラブルや失敗は、もはや避けるものではなく、「起きるのが当たり前」の前提条件です。だからこそ、起きたトラブルに対してどう反応し、どう立ち直るかという 「心のOS(オペレーティングシステム)」 をアップデートしておく必要があるのです。
3. 【人事の視点】レジリエンスが高い人の「3つの共通点」

数多くの職員を見てきた中で、逆境から復活できる人には明確な共通点があります。私はこれを 「レジリエンスの方程式」 として定義しています。
【レジリエンスの方程式】
レジリエンス = ①自己受容 × ②解釈の転換 × ③ソーシャルサポート
① 自己受容:弱さを見せる勇気
立ち直りが早い人は、自分の弱さを認めています。「今は辛い」「自分は傷ついている」と素直に認められるからこそ、適切な休息や対策が取れます。逆に脆い人は、「自分は大丈夫」と嘘をつき、傷口を広げてしまいます。
② 解釈の転換:失敗を「データ」と捉える
失敗した時、「自分はダメな人間だ」と人格を否定するか、「やり方が間違っていただけだ」と行動を否定するか。レジリエンスが高い人は後者です。彼らにとって失敗は恥ではなく、改善のための「データ収集」に過ぎません。
③ ソーシャルサポート:一人で戦わない
これが最も大きな差です。彼らは「助けて」と言うスキルが高いのです。信頼できる他者との繋がりこそが、回復力を高める最強のセーフティネットになります。
4. 【実録】失敗から蘇ったAさんのストーリー

理論だけではイメージしづらいかもしれません。ここで、私が実際に目の当たりにしたある職員(Aさん)のエピソードをご紹介します(※プライバシー保護のため、一部脚色しています)。
Aさんは、新規プロジェクトのリーダーに抜擢された優秀な若手職員でした。しかし、意気込みすぎて周囲と衝突し、結果的にプロジェクトは大幅な遅延。チーム内の空気は最悪になり、Aさんは責任を感じて出勤がつらくなってしまいました。
面談をした時、Aさんは完全に自信を失い、「自分にはリーダーの資格がない。辞めたい」と漏らしました。
しかし、そこから彼は変わりました。
まず彼が行ったのは、自分の「思考の癖」に気づくことでした。
「一度の失敗ですべて終わりだ」という極端な思考(認知の歪み)に気づき、「今回の失敗は、チームマネジメントを学ぶ機会だ」と意味づけを変えました(リフレーミング)。
そして何より、彼はプライドを捨てて、先輩や同僚に頭を下げて回りました。「自分の力不足でした。ここを助けてください」と。
すると、離れかけていたチームメンバーが「そこまで言うなら」と力を貸してくれるようになり、プロジェクトは見事に軌道修正されたのです。
最終的にAさんは、その年の社内表彰を受けるまでの成果を上げました。
彼が評価されたのは、成功したことよりも、 「どん底から這い上がり、チームの絆を以前より強くしたこと」 でした。
これこそが、レジリエンスの実践例です。Aさんは特別なスーパーマンではありません。思考法と行動を少し変えただけなのです。
5. 今日からできる!レジリエンスを鍛える「心の筋トレ」
レジリエンスは筋肉と同じで、トレーニングで後天的に鍛えることができます。
ここでは、私が推奨する3つの具体的なアクションプランを紹介します。
① 「感情の言語化」ログ(1日1分)
ノートやスマホのメモ帳に、その日感じた「ネガティブな感情」を書き出してみてください。
- 「上司の一言にイラっとした」
- 「会議で発言できず悔しかった」ポイントは、良いことだけでなく、嫌な感情もそのまま書き出すことです。感情は文字にして「外在化」することで、客観視できるようになり、脳のストレス反応が鎮静化することが科学的にも分かっています。
② 「10分間瞑想」で脳を休める
GoogleやAppleなど、世界のトップ企業が研修に取り入れている「マインドフルネス瞑想」。
難しく考える必要はありません。通勤電車の中や、お昼休みのトイレの中でも構いません。
「今、ここ」にある自分の呼吸だけに意識を向ける時間を1日10分作ってください。
脳の疲労が取れ、感情の波に飲み込まれにくくなる「心の土台」が作られます。
③ 「感謝日記」でポジティブ回路を作る
寝る前に、その日あった「良かったこと」や「感謝できること」を3つ書き出します。
- 「ランチが美味しかった」
- 「同僚がエレベーターを開けて待っていてくれた」こんな些細なことでOKです。人間の脳は放っておくとネガティブな情報を集めやすい性質があります(ネガティブ・バイアス)。意識的にポジティブな要素を探す習慣をつけることで、脳の回路が変わり、困難の中にも希望を見出しやすくなります。
まとめ:その苦しみは、あなたが強くなるための助走期間
ここまで、レジリエンスの正体と具体的な鍛え方についてお話ししてきました。
重要なポイントを振り返ります。
- レジリエンスは「耐える力」ではなく「戻る力(しなやかさ)」である。
- 自己受容、解釈の転換、周囲への「助けて」が鍵となる。
- 感情のログ、瞑想、感謝日記など、小さな習慣で心は鍛えられる。
今、あなたが苦しい状況にいるなら、それはあなたが弱いからではありません。
あなたが今、まさに壁を乗り越えようと挑戦している証拠です。
いきなり全てを実践しようとする必要はありません。
まずは今日、寝る前の1分間だけ、スマホを置いて深呼吸をしてみてください。
あるいは、今日あった小さな「良かったこと」を1つだけ思い出してみてください。
その小さな一歩の積み重ねが、半年後、1年後のあなたを、 「どんな逆境もしなやかに楽しめる自分」 へと変えてくれるはずです。
逆境は、あなたを潰すためにあるのではありません。
あなたの中に眠る、まだ見ぬ強さを引き出すためにあるのです。







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